長野県南信地方の風習「すり初め(1月2日に長芋をする)」について調べてみた

長野県南信の習慣「すり初め(1月2日に長芋をする)」を紐解く 長野県のローカル情報
悩める学生
悩める長野県民

長野県には数多くの伝統・風習・習慣が存在しますが、南信地方の「すり初め」という風習がとても気になりました。くわしく知りたいのでまとめて欲しいです。

結論から言うと、長野県南信地方につたわる「すり初め(すりぞめ)」は、1月2日に長芋をすってとろろにして食べる習慣のこと。

私なんぞは中信の人間なので、ぶっちゃけこの風習を知らなかった。すり初めにおけるTwitterの反応もまた「知らない」と答える長野県民が多かったように思う。

ということで当記事は、長野県南信地方の風習「すり初め」についてガッツリ調べてみた。

すり初めについてサクっと知りたい方は、インプットにどうぞ。

記事の信頼性

  • 筆者は長野県出身で在住歴20年の企業メディアライター
  • 長野県のあちこちで日々さまざまな経験と情報収集を重ねる(中信がメイン)
  • Twitterフォロワー:約5,800人

「すり初め」とは

長芋

長芋

「すり初め(すりぞめ)」とは、長野県南信地方につたわる習慣のひとつ。1月2日に長芋をすって神様にお供えし、「悪いものは滑って去っていき、良いものがスルっと滑り込んでくる」よう願いを込める。

この習慣が生まれた背景は定かでない。しかし、昔の人々がおこなっていた「1年間の平安を願い、縁起をかつぐものを食べる」という風習が、伝承された説が有力と言われている。

また、神様へお供えするという形式以外にも次のような諸説がある。

  • ①:1月2日にとろろ飯を食べる風習
  • ②:1月3日にとろろ飯もしくはとろろ汁を食べる風習(「3日とろろ」と呼ばれる)

 

いずれにしても「すり初め」は、正月の「こと始め」にあたる1月2日をメインに、長芋をすってお供え・食べることで幸福を呼び込む行為のことをいう。

なぜ長芋(とろろ)なのか?

すり初めにはなぜ長芋が用いられるのか。
その理由は「滑る」という特徴だけでないらしい。

「とろろ芋」は長く伸びる性質から、縁起が良いと言われている。さらに長生きを願うという意味もあるとのこと。

 

ものすごくシンプルな願掛けだけど、「なるほど」とうなずいてしまうこの感覚・・・。昔の人からの教えは正しいと思ってしまうタイプなので、このすり初めも妙に納得した。

私はこの度のリサーチがきっかけで、すり初めを自主的に行っている。

 

南信地方の風習といえど地域によって異なる「すり初め」

長芋をする

とろろの楽しみ方は人それぞれ

すり初めは長野県南信地方の風習だが、地域によって形式は異なる。

  • 諏訪・下伊那…1月2日もしくは3日に長芋をすって芋汁を作る
  • 木曽エリア…1月2日にすり初めとしてとろろ汁を食べる
  • 南信地方の各村…主に1月2日、とろろもしくはとろろ汁を食べる

 

このようにすり初めは、必ずしも1月2日に行う習慣ではない。地域によっては3日に長芋をすり、独自の食べ方をするのだ。

ショギョウ
ショギョウ

ちょっとだけ補足なんですが、松本市においても「4日とろろ」と言われる風習があるようです。これは1月4日に「とろろ飯」もしくは「とろろ汁を食べる」習慣のようですが、まったく知りませんでした(汗)。

すり初めはあくまで長野県南信に広がる風習。しかし、中信地方の一部にも伝わっているらしい。

いやあ、ホント知らないことだらけだ。
リサーチして勉強になった。

以降は1月2日と1月3日の違いについて。
もっとインプットしたい方は、このまま読み進めてほしい。

1月2日のすり初め

とろろ

「とろろ」

すり初めのオーソドックスは、1月2日に「とろろ飯」を食べるという形式。南信地方のほとんどにこのスタイルが伝承されている。

もはや説明するまでもないが、「とろろ飯」は長芋をすって作ったとろろを白飯にかけたもの。

すり初めをおこなう理由としては、「長芋(とろろ芋)」をすってご飯を食べることで、幸福を家の中にすり込ませるため(目的)。

また、上記を実施することにより、次の「ことはじめ」をクリアできる。

  • ①:長芋のすり初め
  • ②:白飯も炊きはじめ

 

正月は味付けの濃い料理とアルコールのオンパレードになりやすい。しかし、1月2日にすり初めを挟むことによって、ヘルシーかつサッパリする「とろろ」の恩恵を得られそう。

いわば現代のすり初めは、正月における様々な乱れをリセットしてくれる存在かもしれない。

1月3日のすり初め

とろろ飯

「とろろ飯」

すり初めを1月3日に食べる地域も存在する。
この形式は「とろろご飯」もしくは「とろろ汁」を食べる。

当該地域では「3日とろろ」と呼ばれ、次の目的をもつ。

  • ①:「健康祈願」
  • ②:「年末から正月にかける飲食において疲れた胃腸を休めるために食べる」
  • ③:「3日とろろを食べると1年間風邪をひかない(言い伝え)」

 

3日とろろは理にかなっている。

先述したけど正月は暴飲暴食しやすいし、自炊から遠のく傾向にある。そんな中での3日とろろは、素晴らしいアクセントとなるに違いない。

 

【総括】すり初めは長野県全域に広まるべき風習

すり初めをあらためてまとめるとこんな感じ。

  • ①:長野県南信地方につたわる風習
  • ②:1月2日(1月3日)に長芋(とろろ)を食べる
  • ③:目的は「願掛け」
  • ④:南信地方でも地域によって食べ方が違う
  • ⑤:長野県民の多くが意外と知らない

現代のすり初めは、正月に起こりやすい暴飲暴食の胃腸休めといった役割が強いかもしれない。されど、理にかなっている風習だと思うので、是非とも多くの長野県民がこれを取り入れるべきかと。

昔の人はやっぱりゴイスー。

 

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参考資料「レファレンス共同データベース」「五十鈴神社『宮司の社務日誌』」


 

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